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猫ポーチ入りクッキー

この週末、横浜にミュージカル『キャッツ』を見に行ったのですが、その時に買ったおみやげにおもしろ言葉を見つけました。

おみやげはこれ。

黒い猫の形のポーチにクッキーが数枚入っているというもので、ちょっとかわいくて手触りが良さそうなポーチに娘たちがほしがったのです。中のクッキーは何の変哲もない丸クッキーかと思いきや、肉球形で、けっこうウケました。

さて、本題のおもしろ言葉ですが、品名を注目…

「猫ポーチ入りクッキー」

これが私にはけっこう気になりました。

意図するところは「ネコ形ポーチに入ったクッキー」なのだと思いますが、それを「猫ポーチ入りクッキー」とまとめてしまうのには何となく違和感があるんですよね。

ではその違和感がどこから来るのか?

ちょっと考えてみました。

まず、「△△入り○○」という構文の使い方。
「△△入り○○」と言った場合、たいてい○○の部分が主要部ですよね。
たとえば、「イカ入りせんべい」。「イカが入ったせんべい」ということで、モノとしては「せんべい」の一種です。
「毒入りコーラ」。こちらはコーラの一種と言ってはヘンですが、それでもモノとしては「コーラ」です。

さて、「猫ポーチ入りクッキー」に戻ります。

「イカ入りせんべい」や「毒入りコーラ」との連想でいくと、これはあくまでモノとしてはクッキーだと言っているように感じられます。そうすると、なんかクッキーの中にネコポーチが混ぜてあるみたいに聞こえませんか(「イカ入りせんべい」と同じように考えると)?

そこら辺の違和感を置いておいたとしても、「猫ポーチ入りクッキー」だとこの製品はあくまでクッキーであるように聞こえてしまいます。

でも、クッキーが欲しくてこれを買う人も非常に少ないだろうし、どう見てもクッキーが製品名というのもヘンな気がしますよね。外からの見た目でもクッキーは見えていないわけだし。

やはりこの製品はクッキーと言うよりポーチだろう、と考えると、「クッキー入り猫ポーチ」にすればいいように思えます。

しかし、悩ましいことに、これも何となくおかしい。

というのも、「△△入り○○」といった場合、「△△」の部分は「イカ入りせんべい」の「イカ」のように、原材料の一部として混ぜてあるものが来ることが多いんです。しかし、この製品の場合、「クッキー」は「ポーチ」の本質に関わっている(ポーチの一部、構成要素をなす)わけではないですよね。そこに違和感の原因があります。

私には違和感がある「猫ポーチ入りクッキー」という製品名ですが、一方で、この製品名を付けた人の苦労も分からないではありません。

「ネコ形ポーチに入ったクッキー」といった説明的な表現だと、より正確かもしれませんが、ちょっと持って回った感じで製品名っぽくないです。そこで「△△入り○○」という定型を使って、名前らしいよりコンパクトな表現にしようとしたのだと思います。しかし、この場合の使い方が「△△入り○○」という表現の典型例と微妙にずれているために違和感を醸し出してしまったということでしょう。

このあたりの語感は、一般的傾向はありますが、詰まるところ個々人がこれまで見聞きした使われ方をもとにした感覚がベースになってできているので、人によって感じ方も違います。ですから、こう感じない人もいるでしょうし、こう感じるのが正しいというわけでもありません。ただ、私の感じた違和感を私なりに分析してみました。

皆さんはどう感じますか?