赤ちゃんはいつから言葉を習得し始めるのか

子どもの時は誰でも、どんな言葉でも習得する能力があるわけですが、いったい赤ちゃんはいつ頃から特定の言語への習得を始めるのでしょうか。そのプロセスは思ったよりずっと早い時期から始まっているらしいことが、最近の研究の中でわかってきました。

Patricia Kuhl: The linguistic genius of babies

赤ちゃんが特定の言語の音の聞き分けを習得し始めるのは、なんと1才にもならない頃から。周りで聞かれる音の統計を取っていて、頻繁に聞こえる音に注意を向けるようになるらしいのです。そして1才を越えたあたりからは周りで話される言語へのチューニングが進んで、その言語で使われない音の聞き取り能力が落ち始めると。

例えば、日本語を習得し始めた赤ちゃんは、なんと1才ちょっとで、だんだん[l]と[r]の聞き分けがしにくくなっていくというんです!

言語の習得については、思春期を迎えるころに「臨界期」(critical period)と呼ばれる時期があって、それを越えるとそれまでできていた自然な言語習得がしにくくなるということが長く言われてきましたが、こんなに早くから特定の言語への脳の順応が始まるというのは驚き。どうりで大人になる頃には自分が話す言語にない音の区別はすっかりできなくなっているわけです。人間の脳の適応能力ってすごいんですね。

さらにすごいのは、赤ちゃんの注意のむけ方。赤ちゃんに単に音声を聞かせても音の区別の学習は起こらない!例えば、ビデオを通して発音を聞かせたり、ぬいぐるみを見せながら音声だけを聞かせたりしても、赤ちゃんの脳はその音声に合わせた順応を起こさないというんです。生の人間が面と向かって話しかけてくれる時の発音だけを学習するとのこと。

これを言語習得の現場に置いて考えてみると、これ、すごいことです。つまり、赤ちゃんは周りで話されるいろいろな発音は聞き流し、自分と直接関係を持つ人(親やその他の面倒を見てくれる人)の発音に順応するようになっているというわけです。

人間の脳が、単に外部刺激を機械的に処理したり学習したりするのではなく、社会的関係を基盤とした情報処理をしているというのはすごく面白くないですか?

私はかなり感動しました。

人間って、とことん社会的動物なんだということを感じさせてくれる話ですよね。

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