曖昧な表現:限定修飾と叙述

「今日は私の好きなパスタがない」という文、2通りの意味にとれると思うんです:好みのパスタがなかったのか、パスタ全般が好きでそれが全てなかったのか。イントネーションで表し分けることもできると思うんですけど。これも言語学の範囲でしょうか?
(SAさん)

これは立派な言語学の問題です!

まず、2つの可能な解釈を確認しておくと:

(1) 私の好きな種類のパスタ(海の幸のフェティチーニとかペンネアラビアータとか)がない~他のパスタはあるけれども

(2) 私はパスタはどれでも大好きだけれども、そもそもパスタが全くメニューにない~パスタ以外の食べ物しかない

となります。

ここで注目したいのは[私の好きな]と言う部分です。

この[私の好きな]は[パスタ]のことに関係しているわけですが、カギになるのは、この[私の好きな]がどのような形で[パスタ]に関係しているかです。

(1)の解釈を取ったときには、[私の好きな]は[パスタ]の種類を限定しています。パスタにはいろいろなものがあり、その中で[私の好きな]タイプというように限定して取り立てています。

それに対して、(2)の時には、[私の好きな]は食べ物のジャンルとしてのパスタ全体を指しており、パスタのサブタイプを取り出そうとする(1)の用法とは異なります。(2)の用法では、(1)と違って[私の好きな]という表現は対象を限定していません。むしろ、パスタについてのサイドコメントのように感じられます。

この違いは、[私の好きな]を取ってみたときに意味がどう変わるかを見てみるとはっきりわかります。

「今日はパスタがない」というと、文の内容が(1)とは大きく異なってしまいます(私の好み種類のパスタがないだけで、パスタがないわけではない)。一方、(2)と比べると、事実関係は同じであることがわかりますか(どちらもパスタが全くないと言っている)?

この違いは、[私の好きな]が言及対象を絞り込む役割をしているかどうかによるものです。

(1)の様な関わり方は「限定修飾」用法、一方、(2)のような関わり方は「叙述」用法などと言われます。

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